2010-03-08から1日間の記事一覧

「サミング・アップ」  モーム著  行方 昭夫訳

この本の内容を1600字で紹介するのは不可能である 「月と六ペンス」「人間の絆」は中学・高校の頃読んでいて、モームは好きな作家だったにもかかわらず、この本の存在をつい最近まで知らなかった。 これはものすごい本である。64歳、当時としては人生…

「宇宙生命、そして『人間圏』」 松井 孝典著

「地球にやさしい」という発想が、どれほど無理解で傲慢かということをみんなが知れば世界を少しは変えられるかもしれない。 著者の松井先生は、太陽系内の惑星(天体)の起源・進化・現状などを研究し、地球と比較検討することで、地球、さらには宇宙の成り…

「アンネの日記 増補新訂版」 アンネ・フランク著  深町 真理子訳

過酷な運命と引き換えに残された人類の宝物。戦争の理不尽さを嘆くだけではもったいない。 アンネ・フランクという少女の、13歳から2年余りにわたる日記が貴重なのは、それがアンネとアンネの家族および彼女を取り巻く人々の死と引き換えにこの世に送り出さ…

「東京奇譚集」 村上春樹著

天才的職人の技に気軽に酔いしれる幸福 この本を手に入れたのはずいぶん前のことだ(というわけでもう文庫になっちゃってるんですね)。最初の「偶然の恋人」を読み、期待通りの面白さに舌を巻き、次の「ハナレイ・ベイ」を十分に味わい、満ち足りた気持ちに…

「14歳からの哲学」 池田 晶子著

14歳でこの本を手に取るチャンスを得たあなたは幸せだ もう5年も前に出た本だし、著者の早すぎる死とも相まって大きな話題にもなったので、この本についてはすでに多くの書評や感想が出尽くしている感がある。好意的な意見があり、批判的な意見があり、この…

「グレート・ギャツビー」 スコット・フィッツジェラルド著 村上 春樹訳

村上春樹渾身の訳業がさらにくっきりと浮かび上がらせたフィッツジェラルドの天才。 たったの29歳でこの小説を書いたというのは信じがたい。そして1940年、たった44歳で死んでしまった。まさに波乱の人生であり、フィッツジェラルドは早足で時代を駆け抜けた…

「オシムの言葉」 木村 元彦著

オシムの魅力を余すところなく伝え、ユーゴの戦火と現代をつなぐ糸を鮮やかに浮き彫りにしたすばらしいノンフィクション。 「オシムの言葉」というタイトルから、オシム語録的なものを−−ジェフのHPにあったような−−をイメージしていたが、全然違った。 この…

「14歳からの仕事道」 玄田有史著

これまで玄田さんの発言を読んできたものにとって、この本の中に新しい発見はそれほど多くないし、「14歳の」とあるにしては多くの14歳にとって、理解するのはなかなか難しい内容だと思う。漢字にルビが振ってある以外、中学生一般向けの内容とは言いがたい…

「逆シミュレーション音楽」をめぐって(2)

その2 西洋音楽とロマン派 三輪さんにとって自明だった次の2つの前提を「疑ってみる」ことから「逆シミュレーション音楽」が発想されたという。 (1)西洋音楽が音楽のすべてである (2)ロマン派の音楽概念が西洋音楽のすべてである クラシック音楽に興味…

「逆シミュレーション音楽」をめぐって(1)

その1「What is Reverse-Simulation Music?」 三輪眞弘氏のアルス・エレクトロニカ賞グランプリ受賞記念講演「The Long and Windingroad」(と確かおっしゃっていました)を聞く機会があり(http://d.hatena.ne.jp/Uu-rakuen/20070625/p1)、たいへん興味を…

「また会う日まで 下」 ジョン・アーヴィング著 小川 高義訳

事実という「曖昧な記憶」によってこの世界が形作られている以上、唯一絶対の真実などはない。自分の物語を「信じられる」ようになれば、すなわちそれが真実となる。 上巻の後半でもすでに母・アリスの影響は薄くなって、物語の中心はジャック自身へと移って…

「また会う日まで 上」  ジョン・アーヴィング著  小川 高義訳

私がいまさら言うまでもないことは重々承知の上だが、アーヴィングの作品は、現代作家の中では圧倒的に面白い。この作品に対してもその評価はいささかも揺るがない。 アーヴィングの世界は、(少なくとも私には・良くも悪くも)そこに生きているのが真っ当だ…

明日を信じてチャレンジする勇気−−上原ひろみ、羽生善治。

上原ひろみのコンサートについては以前にも書きましたが(http://d.hatena.ne.jp/Uu-rakuen/20051125)、この本を読んで改めてそのすごさに圧倒されました。彼女は常に全身全霊を傾けて音楽に取り組んできたことを私は信じることができます。彼女のコンサート…

平出隆著「ウィリアム・ブレイクのバット」

山崎ナオコーラの「人のセックスを笑うな」について、「タイトルを見ただけで、もう賞(文藝賞)はこの人に決まりだと思った」という趣旨のことをどこかで高橋源一郎が言っていた。この本のタイトル「ウィリアム・ブレイクのバット」を目にしたときの「これは…

平尾という男、やはり只者ではない。

私のラグビー観戦歴において平尾誠二は最大のスターだった。ほとんどのゲームをリアルタイムで見てきた。この本の中には「あのとき、平尾はそんなことを考えていたのか」というような話もいくつもあって、それも興味深かった。 95年平尾は神戸製鋼で7連覇を…