駒苫よくやった!

 負けちゃったけど、駒大苫小牧の選手たちは本当によくやったと思います。1-4から9回に2ランホームラン。信じられません。その精神力、集中力、チャレンジ精神。「負けたらどうしよう」なんて全然思ってなかったに違いない。ちょっとでも迷いがあったら、そういう場面で力を発揮することはできない。
 勝負に挑む以上、勝つことが何よりも大切です。だって、そのために選手はやっているわけですから。 初回先発菊地から入ったこと、それから4番本間がヒットを1本も打てなかったこと、結果から見ればこれが敗因ということになると思います。

勝負以外にも大切なことはある

 香田監督は、田中の負担と来年以降のチームのことを考えての起用にちがいありませんが、初回の1点はもったいなかった。本間は最後まで、外角のスライダーについていけなかった。斎藤のピッチングはすばらしかったし、今日は内角もずいぶん攻めるなど工夫もしていました。ただ、1球目外角のストレートからはいるというパターンが明らかに多かったので、初球からこのストレートを積極的に狙って、右方向に打つようなバッティングはできなかったのだろうか、とは思うのです。この24イニングで本間に1本ヒットが出てたら、展開はまた違っていた気がする。
 しかし、1つ1つの勝負は時の運です。
 この試合ということでは、勝つことが何よりも大事だけど、彼らの人生では、勝つことよりももっと大事なことはたくさんある。本当に一生懸命やった。本当に最後まであきらめなかった。それが何より見るものの心を打つし、すばらしかったと思います。北海道の人たちばかりでなく、全国で何百万人もの人が感動し、勇気付けられたに違いありません。「あの時確かにそういう力を自分たちは持っていたんだ」ということを誇りに−−なぜそういう奇跡のようなことができたのかもしっかり確認して−−、その事実を忘れずにこれからもそれぞれの道でがんばってもらいたいと思います。

そして、早稲田実業

 この初優勝は球史に残る勝利だったと思います。高校生にしてはうますぎる野球が、私としては好みではありませんが、それはそれで、「早稲田」という名の下に集い、伝統、環境の中で考え、鍛えた上げた野球なのでしょう。それを十全に発揮して優勝した彼らもまた、当然ながら栄光に値するすばらしいチームでした。
 特にピッチャー斎藤の投球には、神々しさにも似たすごさを感じましたね。すごい投手だと思います。最後のバッターとなった駒苫・田中との勝負にはしびれました。この二人、今後は大学野球に行くのか、プロに進むのかわかりませんが、肩を壊したりすることのないように、まずは疲れを癒し、十分なケアに努め、いつかどこかでその雄姿をぜひまた見たいものだと思います。
 暑かった夏ももうそろそろ終わりです。

■2006年夏・甲子園決勝−※延長15回引き分け(1-1)再試合−
 早稲田実業 対 駒大苫小牧 (4-3)