サッカー オリンピック代表、まずは出場権獲得おめでとうございます。U-22 日本vsサウジアラビア(0-0)

 昨日のサウジアラビア戦は、全体としては緊張感のある中集中したいい試合だった。「引き分け以上」で出場権獲得、逆に言えば負ければおしまいなわけだから、そのイニシアチブはほんのわずかだったといっていい。先に1点取ったほうが圧倒的優位なのだから、基本的には1点を先にとりに行くサッカーを両チームともすべきで、実際そのようにゲームは進んだ。ロスタイムに入ったら引き分けも意識して最低必要な措置は講じるべきだろう、という程度の優位にすぎない。引き分け狙いになどいって勝てるわけがないことをすでに日本のサッカーファンは過去の経験からよく知っている。
 オシム監督への感謝とエールの気持ち、昨今なかった満員の観衆の中でのホームゲームだったことなど日本代表が集中しレベルアップできる環境は整っていた。雌雄を決する試合だったが、サウジアラビアともどもフェア・プレーに終始したことは賞賛されていい。

器用なプレーでなく、常にベストなプレーをめざしてもらいたい

 結果的に引き分けで出場権を得たが、後半40分過ぎの2度のコーナーキックのチャンスに2度ともショート・コーナーを使い、明らかな時間稼ぎをしたのはいただけない。そういうやり方をして、もしこの試合に負けたら最悪だった。逃げた上に結果もついてこないことになるわけだから。選手を1人も代えていなかったので選手交代で時間を使うのは当然の作戦だと思った。準備していたと実況があったが結局1人も交代しないままロスタイム2分をなんとかしのいだ。審判の問題なのか、日本サイドの手続きがまずかったのかわからないがもし負けていたらたいへんなミスである。
 ゴール近くで短いパスをつないだり、ヘンにトリッキーなプレーをしたり、みんな昔の選手に比べてうまいんだろうけど、どうもこのチームには(あまりいい言葉ではないが)「小ざかしい」プレーが目につく。大胆さにかける。アジアレベルでは通用するかもしれないが、世界レベルで結果を出すには物足らない気がする。それが川淵キャプテンの批判−−言い過ぎを詫びたと報道があったけれど−−につながったと思う。イマイチ魅力に欠ける。個人的にはこの日サブに回った平山やカレンを使って欲しいと思っているが、彼らはチャンスに結果を出せなかった。ただ、五輪の舞台で勝利するには彼らの力が必要だと思う。

Jリーグでも柏木と李を見たいと思った

 そんなわけで私もU-22の試合はあまりよく観ていなかったが、この試合で2人の選手が気になった。1人はミッドフィルダーの柏木。彼の運動量は本当に驚異的だ。相手のゴールから自分のゴール近くまで攻守にわたってチームを救うプレーを90分間し続けていた。まさに獅子奮迅の活躍だった。インタビューも素直でよかった。
 もう一人はフォワードの李である。元レッズの福田正博がそのゴール前で相手ディフェンダーを幻惑する動きを随分と褒めていたが、私は彼のシュートにいたるまでの決断の速さ、シュートの強さに魅入られた。惜しくもゴールは奪えなかったが昨日の試合もすばらしかった。

 オシム監督はことのほかオリンピック代表チームへの思い入れが深かったと伝えられている。なんでもかんでも「オシムのため」みたいな思考停止状態のアナウンスには辟易するが、もし今日の結果を知ったならきっと喜んでくれるに違いない。この結果が病と闘う力になってほしいと願うばかりだ。水本の涙は、オシムへの日本中のサッカーファンの気持ちを代弁していたと思う。