ウィンブルドン 男子4回戦 フェデラー対ソダーリング(6-4、7-6、7-6)

強いフェデラーが戻ってきた

 と書いてみて、フェデラーが弱かったことなど1度もなかったと思い返した。20大会連続で4大大会セミファイナリスト。4大大会優勝はサンプラスと並ぶ最多の14。
 ただ、全仏では今年優勝したものの2005〜08年までナダルの4連覇を許し、昨年のこのウィンブルドンでもナダルに破れ、ランキングも1位を奪われた。ポーカーフェイスぶりにもほんの少し弱気な面が見え隠れした気がする。
 しかし、先ほどWOWOWでLIVEで見たフェデラーはまぎれもなく、強いときのフェデラーだった。何一つ動じることはない。

ソダーリングにチャンスは1度だけだった

 全仏決勝の再現と言うことでワクワクしながら観戦した。しかしソダーリングには勝つチャンスは1度しかなかった、正確には勝つチャンスではなくて、負けない状態を1ゲームでも先延ばしにするチャンスと言ったほうがいいかもしれない。
 意外と器用な面もこの試合でわかったが、基本的には193cmの長身を生かしたビッグサーブ(今大会の最速は140マイルと確かアナウンスがあった)と強烈なフォアハンド。ただ、スウェーデン伝統のストローク・オンリーのベースライン・プレーヤーではなくネットにつめることもできる。
 したがってこの日のようにファースト・サーブがそこそこ決まればサービス・ゲームをキープすることは高い確率で可能だ。結局サービスを落としたのは第1セットの1ゲームだけである。しかしテニスはそれだと勝てない。結局タイブレークで第2、3セットを落とし敗れた。
 第3セット第9ゲーム。この試合初めてのブレークポイントを手に入れたが、結局ものにできなかった。ソダーリングのブレークチャンスはこのゲームの2度だけである。
 結果だけ見ればかなりの善戦のようだが、テニスの試合としては勝つチャンスはほぼなかったといっていい。
 この第9ゲーム以降は気の良すぎるソダーリングもさすがに必死で、それこそガンガンネットに詰めるなどブレークまであと一歩だったが、そこはやはりフェデラーのスキのなさが勝った。

フェデラーと遊び

 「強いフェデラー」証拠のもう1つは、昔(ナダルとの全仏以外)ほとんど無敵だったころのように、すべてのプレーが完璧すぎてあまりにも簡単に見えてしまう気がしたからでもある。サーブのコントロール。ハーフボレー。ドロップショット。下がりながらの逆クロスやボディーに来たボールに対する対応など、どれもいとも簡単に見える。
 解説の柳さんによれば、一時ドロップショットなどのテクニカルな練習ばかりしているのを見たことがあるとか。よくわからないが、たぶんサッカー選手のリフティングみたいなものだろう。それだけでは必ずしも世界一にはなれないだろうが、そういう遊びのセンスに優れていることがフェデラーの強さの秘密なのだと思う。上手に遊ぶには「考える」必要もある。楽しむとは「考える」ことだからだ。
 そういう意味でこの日のフェデラーのサービスはしびれた。フェデラーのサーブは決して遅くないが、いわゆるビッグ・サーバーではない。最速で200kmを超えるくらいだと思う。この日は特に、コースを打ち分け、スピードも緩急をつけた。
 ソダーリングのような大きな選手の場合、おそらくはやはり小回りが利かないところが弱点になる。こういう選手は前後左右に揺さぶる、緩急をつけるというのが攻めの常道に違いない。ソダーリングは思っていたよりはうまく対応した気がするが、それこそがフェデラーの対ソダーリング対策だったのではないだろうか。
 遅いサーブを混ぜることがこんなに効果があるというのは、初めて見た気がするが、それもこれも完璧なボールコントロールがあってこそだと思う。エースの数は5分5分だったんじゃないだろうか。

今大会のゆくえ

 今日1日で8試合が行われベスト8が出そろうそうだ。他の結果がわからないが、どうだろう、チャンスがわずかでもあるとすれば、地元の期待を一身に受けるアンディ・マレーくらいじゃないだろうか。私は彼のテニスをちゃんと見たことがないので、どのくらい強いのか本当はよく知らない。評判からの推測にすぎない。
 正直に言って、フェデラーの心身によほどのアクシデントでも起こらない限り、優勝はほぼ100%間違いないと確信する。ナダルがいないんだから。