この試合のフランスは98年のチームの匂いがした。強かった!
⑨フランス対スペイン(3-1)
安定した守備と最強のボランチ
ブラジル対ガーナ戦を我慢して、4時に目覚ましをかけたが、起きられず、前半30分過ぎから観戦。28分にスペインがPKを決め0-1だった。やはり今回のフランスでは厳しいかとまず思った。
ところが、この試合のフランスは、グループリーグとは違っていた。自陣に入った活きのいいスペインの攻撃陣に対しても、寄せがとても速くて、ことごとくボールを奪い取った。飛ぶ取り落とす勢いだったフェルナンド・トレスもほとんど仕事ができず、終始さえない顔でプレーせざるを得なかった。フランス選手は大きく、どっしりとして見えたが、それはアウェイの白のユニフォームのせいばかりではない。守備においては、ボランチの二人、マケレレとヴィエラがすばらしいパフォーマンスを見せた。
そして、ジダン。
出場停止の1試合が休養となり、またこの試合が20度という涼しい中で行われたこともラッキーだった。この試合のジダンは最後まで精力的に動き、決定的な仕事−−それもジダンらしい、ジダンにしかできないファンタジックなプレーをいくつも見せてくれた。美しい動き、しかもしなやかで強い。3点目のドリブルからのゴールはもう、予定されたプレゼントのように、プジョル、そしてレアルのチームメイト カシージャスを翻弄し、魔法の右足から放たれたボールはあざやかにゴールに吸い込まれた。
試合後、あんなにうれしそうなジダンの顔を久しぶりに見た気がする。
今期で引退を表明した−−勝手なことを言えば、今からでも思い直してほしい−−ジダンにとってのクラブでの最終戦(実質的な引退試合は前節のサンティアゴ・ベルナベウでのホーム最終戦だったが)では得点しながらゲームは負け。リーグ優勝はすでに望みを絶たれ、かろうじて2位を確保したが、笑顔はなかった。
リベリーとジョルカエフ
前半41分、ヴィエラのスルーパスに、2列目からリベリーが抜け出し、ゴールを決め同点。リベリーの動きに98年のジョルカエフが重なったが、リベリーの方が強くキレがある気がした。グループリーグでは、精力的に動いてはいたが、あまりチャンスを作れていなかった。見違えるような、自信にあふれたプレーを見せてくれた。
アンリはあきらめないストライカー
1トップのアンリは、ことごとくオフサイドにひっかかり、得点できなかった。でもこのアンリの動きには、日本のフォワードが見習うべき点があると思った。アンリが点取り屋としてこの数年世界のトップの一人であることを疑う人はいないと思うが、その彼にして、何度オフサイド・フラッグが上がろうが、常に全力で前線への突破を繰り返す。1トップだし当たり前と言えば当たり前なんだろうけど、彼はあきらめていなかった。ゴールを奪うのは簡単なことではないのだ。10回、20回繰り返す中で1度か2度のチャンスがあり、それを決めることが自分の仕事だとはっきりわかっているのだと思う。
後半38分ヴィエラのゴールはスペインには不運だったと思う。アンリへのファウルを取られたが、勝手に倒れたように見えた。ああ、しかしジダンのFKはすばらしかった。アップになったジダンの目はものすごく集中していた。この日の立役者の一人ヴィエラが角度のないところからヘッドで確実に決めた。
時間のないスペインがセルジオ・ラモス、ホアキンなど活きのいい攻撃を見せてくれたが、フランスの守備は鉄壁だった。ロスタイム3分。
そしてプレゼントがもたらされた。
準々決勝の相手はブラジル
ブラジル対ガーナ(3-0)はハイライトしか見ていないけど、(日本戦後半のような)かなり余裕のある戦いぶりだったのではないか。早々にロナウドが史上最多得点を更新するゴールを決め、2点目のアドリアーノも簡単に決めたように見えた。先制したブラジルに逆転するのは至難の業だと思われる。
それにしてもブラジルの失点は、いまだ日本戦の玉田のゴールのみというのはなんかうれしい。
フランスは今日のようなパフォーマンスができれば、ブラジルとて苦戦する可能性が出てきたと思う。フランスは試合ごとに、また90分を通しても、安定度においてやや不安があり、それでもブラジル優位は揺るがないと見るが、今日のジダンを見たからには、1試合でも多く彼のプレーを見ていたい。どうなっちゃうんだろうか。待ち遠しい。