祝! ポルトガル、40年ぶりの4強。

イングランドポルトガル(0-0 PK1-3)

前半はやや穏やかな、フェアーなゲーム

 前半が終わった。フェアないいゲームという第一印象。ポルトガルは相変わらず悪くない。ただ、やはりデコがいないのは痛い。攻撃面で意表をつくような思い切った展開がほとんど見られず、チャンスは主に前がかりでボールを持ったら切れ込むC.ロナウドのドリブルと、フィーゴのクロスやコーナーキックで、決定的なチャンスは相対的にこれまでの試合よりは少ない。またロングボールで打開しようとする場面も何度かあった。
 ポルトガルのゲームメイクが美しいと感じられるのは無駄な動きが少ないからだと思う。同じようにバックラインでまわしていても、常に次の仕掛けを考えているし、常に動きながらボールを蹴っている。
 イングランドはイメージとは全然違って前半は強引なファウルの少ないフェアなプレー振りだ。両チームにチェルシーマンチェスター・ユナイテッドのプレーヤーが多く、クラブでのチームメイトが合い乱れていることもあるのかもしれない。1トップのルーニーはボールを触るシーンが少なく、ちょっといらだっているように見えるが、これまでのところは行儀がよいといっていいだろう。
 ベッカムもコーナーやFK以外ではあまり目立っていないし、なぜかイングランドは終始引きすぎている。ポルトガルの選手間の距離が安定した距離感を保って、結果として守備が非常に安定しているのに対して、イングランドは、下がり過ぎている上に、選手同士が近づきすぎていて、攻守ともに有効なプレーができていない。
 ただ、想像していたよりも力ずくではなく、テクニカルなプレー振りで、おとなしくも見えるが、面白い試合でもあった。

ルーニーは何をしたんだろう?

 後半開始早々にベッカムが足の怪我が悪化したらしく、無念の交代となった。さらに10分後、やはりルーニーはやってしまった。
 アタックはレッドカードをもらうほどの激しいものには見えなかったし、テレビで見ている限りはロナウドに対して手で押した行為くらいしかわからなかったが退場となった。
 これでイングランドは完全にディフェンシブとなり、直後に投入されたクラウチを残して、ほぼ全員がペナルティエリア付近まで下がって守りに徹する作戦を取った。得点チャンスはきわめて限定されることとなり、ボールはほぼ完全にポルトガルが支配する。
 しかし、これだけあからさまに守られると、イングランドのディフェンス陣はなんといってもものすごいメンバーだし、確かに攻めきれず、得点を奪えない。90分修理後、ベッカムがチームメイトに水を配る姿は印象的で、この大会に掛ける強い思いを感じた。
 エリクソンは延長後半にはベッカムに代えた途中出場のレノンに最後の交代枠を使って、DFのキャラガーを入れ、あからさまにPK戦狙いの布陣を取る。確かに、10人で60分を戦ってきたイングランド選手はもうへとへとになって動けない状況でもあり、点を取るチャンスはほとんどなかったからそれもやむをえないだろう。ハーグリーブスただ一人が、無尽蔵のスタミナで、攻守に意地を見せていたけれど。クラウチも、ポルトガルのすばらしいディフェンスの前では、しばしばボールを奪われてしまった。
 しかし、少なくともこの大会では、守りに入ったチームはおそらくすべて−−日本も含めて−−姿を消している。私はイングランドは負けると思った。
 この試合のポルトガルは、デコがいないせいもあるのか、マニシェにしてもシュートは精度を欠くシーンが多かったし、キーパー正面の不運も重なった。ポルトガルはデコ、コスティーリャの代わりに入ったティアゴ、ペティ、途中交代で入ったウーゴ・ヴィアナ、ポスティーガなどレギュラーと控え選手との力の差が歴然としていたように思う。逆にその意味では、デコ、コスティーリャがイエローカードをゼロに戻したことは大きなアドバンテージととらえることもできると思う。
 結局、延長30分もスコアレスのままドローで、PK戦となった。

ポルトガルのリカルドは今大会No.1GKだ!

 PK戦が決まると、C.ロナウドは、ベンチへ行って順番を確かめていた。彼は唯一PK戦を楽しんでいたに違いない。試合中の活躍がこれほど如実に反映されたPK戦も珍しいのではないか。イングランドは孤軍奮闘したハーグリーブスが決めた以外、大看板のランパード、ジェラードもとめられた。ポルトガルのGK リカルドの読みと反応は信じがたいほどだった。止める予感がした。
 一方のポルトガルも、ペティ、ウーゴ・ヴィアナがはずし(ここでも彼らは役に立たなかった)あやうい場面もあったが、これを決めれば勝利という5人目にC.ロナウドが満を持して登場だ。自信満々、必ず決めると信じきった表情に見えた。今の彼はそういう強さを秘めている。そして痛烈なシュートを軽々と決め、こぶしを握り締めて雄たけびを上げた。40年ぶりのベスト4進出が決まった瞬間だった。

今大会のイングランドは最強のイングランドではなかったか

 イングランドは不運だった。オーウェンが早々に怪我で離脱。この試合ではベッカムもまともにプレーできず途中交代。ルーニーもレッドカードで、PK戦を仮に征していたとしても次の試合は出られない。エリクソン監督の思惑はすでに完全に崩れ去っていた。
 だが、オーウェンベッカムが万全の状態なら、このチームは最高のイングランド、優勝も可能なイングランドだったと思う。メンバーはとにかく攻守にすごすぎる。
 DFはガリー・ネビル、アシュリー・コールファーディナンドにテリー。控えにはキャンベルもいる。中盤の破壊力はさらにすさまじい。ジェラード、ランパール、ベッカムジョー・コール、そしてハーグリーブス。そして先のフォワード陣。GKのロビンソンはよく知らないが、イギリス国内では弱点と言われているらしいけれど。このメンバーでイングランドらしいサッカーをやって勝てなければ、監督が悪いか、イングランドサッカーの伝統が通じないか、どちらかと言われても仕方がないくらいの布陣だと思う。

 アナウンサーは気づかなかったようだ、スタジアムにミック・ジャガーの姿が映った。サングラスで表情はよくわからなかったが。イングランド・サポーターの落胆ははなはだしいものに違いない。騒ぎを起こさなければいいと願うばかりだ。

 走行してるうちに、ブラジル対フランスがあと10分で始まる。すばらしいゲームのおかげで眠気も吹き飛んだ。もういきます。