ブラームスは琴がお好き? 守屋多々志美術館・春の特別展(7/2終了)

「ウィーンに六段の調(ブラームスと戸田伯爵夫人)」

 先日、守屋多々志美術館で、特別展を見ました。目当ては「ウィーンに六段の調(ブラームスと戸田伯爵夫人)」と題された屏風絵です
 4曲の横長の屏風。背景は前面に淡いブルーのじゅうたん。画面左下では、背中の開いた鮮やかな紫のドレスを着た戸田公爵夫人極子さんが椅子に座ってお琴を奏でています。右上では立派な1人用のソファに足を組んで腰掛け、ペンを持ったブラームスが、譜面に真剣な表情で目を落としています。
 これほど大きな絵だとは思っていなかったのですが、実物を見ると、時間を超越して、まるですぐそこにいるような感じがし、大変感銘しました。

鹿鳴館の華”と呼ばれた戸田極子伯爵夫人

 戸田極子さんは、〝鹿鳴館の華"と呼ばれた2人の女性の一人だそうで、お父さんは、あの岩倉具視です。(もう一人は陸奥亮子さん。第二次伊藤博文内閣の外務大臣を務めた陸奥宗光の奥さんだそうです。もともと新橋の芸妓さんだったそうで、写真を見る限り、日本人離れした容貌の大変な美人だったようです)。

ブラームスと大垣の縁

 ご主人の戸田伯爵は、第11代大垣藩主。廃藩置県後、伯爵となり、オーストリアの全権公使としてウィーンに赴任します。そこで、この絵のモチーフとなった、お琴の演奏に感激したブラームスが譜面に「六段」を写し取っているというエピソードが生まれるわけですね。私はこの絵を知るまで、ブラームスと大垣にそんな縁があったなんて知りませんでした。その話がどの程度本当のことなのかも知りませんが、「そういうことがあったかもしれない」と想像するだけでワクワクしますね。

守屋多々志画伯(1912〜2003)

 日本画については詳しくないので、大垣出身の守屋多々志という画家についてもほとんど知りませんでした。正直に言えばあまり興味もなかったのです。前田青邨(こちらは名前だけは知っていました。彼も岐阜県中津川の出身だったんですね)という高名な日本画家に師事し、長年の画業が認められ、守屋さんも文化勲章を受賞されています。歴史上のエピソードを題材とする絵を得意とし、高松塚古墳の壁画の模写などもされています。

守屋さんの絵

 大きなものが多く、美術館で実物を見ないとその良さが十分わからないと思います。また図版を見て、長い歴史にまたがった題材のバラエティの多さ、構図や色使いの面白さに興味をそそられました。
 芭蕉の句を題材にした小さな扇絵の連作や、大垣や岐阜の風景を描いた水彩のスケッチもあります。スケッチは毎日描くことを課していたそうで、1日に10数枚も描かれたりしています。
 所蔵品を定期的に入れ替えて展示しているとのことなので、また見に行こうと思います。
 8/31まで合併による新市誕生を記念して入場無料だそうですので、お時間のある方はぜひいらしてみてはいかがでしょうか。