テニスを堪能しました。2006ウインブルドン男子シングルス決勝
ウインブルドンの空は美しかった
白い雲、緑の芝生とのコントラスト。ウインブルドンの空の青さが目にしみた。ほかのどの大会も、ウインブルドンに比較することは不可能だ。場所、ジャッジング、ボールボーイ&ガール、そして歴史と伝統。すべてが美しさを引き立てる。
数年後にはセンターコートに屋根が掛かるそうだが、雨での中断のわずらわしささえ、その美しさを引き立てていた気がして、残念なくらいだ。
第1セットの第1ゲーム、フェデラーのサービスゲームを見てまず、フェデラーの並々ならぬ自信を感じた。ポイントを落としても落ち着いていて、「負けるわけがない」という感じ。しかし、そこはフェデラーなので、驕る事もなければ過信することもない。第1セットは思いもよらぬ6-0で取った。サーブ、ボレー、バックハンドもフォアハンドもすべてのスイングは無駄がなく、美しい。
しかし、だ。ナダルという選手は本当にあきらめない。彼の辞書には「あきらめる」という言葉は載っていないに違いない。ポイント上の劣勢など彼には関係がない。自分を信じる力が人並みはずれている。
アナウンサーが何度も「ここはプレッシャーが掛かります」と実況していたけれど、私には、まったくプレッシャーを感じているとは見えなかった。実際まったく感じていなかったと思う。第4セット、2サービスダウンになったが、次のゲームをナダルはブレークバックした。むしろ追い詰めたはずのフェデラーにはプレッシャーがあった。結局、直後のサービスゲームをフェデラーは集中してすばらしいサーブを連発し、ものにした。
ナダルとイチローは似ている
ナダルの1プレー、1ゲームの儀式は几帳面で徹底したものだ。そういうところはイチローととてもよく似ている。1本ごとに必ずタオルをもらって腕、顔、グリップの汗をふき取る。ボールは必ず3個要求し、1個を返す。1ゲーム終わるごとに、2本あるミネラルウォーターを(中身が違うのだろう)、必ず両方少しずつ飲み、元あった位置に寸分違わぬように戻す。 しかしプレーは大胆かつ繊細だ。
本当に観ていて楽しい。プレー後は20歳の若者らしく、さわやかで愛らしい。彼が人気がある理由だろう。
フェデラーもイチローと似ている
時々超スローモーションで、フェデラーのインパクトの瞬間が映し出された。彼は本当にインパクトの瞬間までボールをしっかり見ている、野球でも、卓球でも同じだが、ボールを道具で打つスポーツでは、ボールが当たる瞬間まで目を離すなというけど、これはなかなかプロでもきちんとできる人は少ない。最高に調子のいいときのイチローのバッティングを思い出した。
男子は2強時代が決定的になった
フェデラーはサンプラス以来の4連覇。8つ目の4大タイトルを手にした。いやあ、テニスを堪能しました。すばらしいゲームだったと思う。
フェデラーは巷間言われている通り、史上最高のオールラウンド・プレーヤーだと思う。ボルグより前はさすがによく知らないが、おそらくこういうオールラウンダーはいなかったのではないか? ボルグ以降の名選手を思い出しても、匹敵しうるのやはりサンプラスくらい。しかし、プレーの正確さ、バランスの良さは、フェデラーのほうが秀でていると思う。サンプラスはパワーでは勝っている。ナダルも言っているそうだが、本当にスキを見つけることはほとんど不可能だ。彼を破るには何かしらの圧倒的なプレーないし強い気持ちが必要だ。それを持ち合わせているのがナダルだろう。そういう意味では、ネットプレーをもう少し磨いて多用できるようになればナダルの将来はものすごい可能性を秘めているといえるかもしれない。24歳のフェデラーが史上最速で4大大会のタイトルを奪っていると解説があったが、ナダルはまだ20歳になったばかりなのだから。
それにしても、男子のこういう最高の試合を観てしまうと、女子の試合はまったく退屈に思えてしまうなあというようなことを思ったりしていた。もちろん女子でも日本のプロ選手でさえ、間近に見るとものすごいスピードなんですが。