田口の代打決勝ホームランにはびっくりした。

野球を愛する我慢強い男

 セントルイス一筋に5年目のシーズン。スタメンでの出場機会がなかなかないなかでも、我慢強く自分のやるべきことを続けてきた。何度マイナーに落とされても、給料を下げられても−−個人的にはかなり理不尽な気がするが、それが37歳の日本人がメジャーで野球を続けるための現実でもある−−、「カージナルスが好きだ。ラルーサ監督についていく」と言いつづけて、このチームに残った男への、当然贈られてしかる褒美だと思い、うれしくなった。
 田口は天才ではないけれども、その実力はオリックスのチームメイト、イチローにさほど引けを取らないと思う。天才には一瞬の爆発力、「信じられない」(日本ハムの監督ヒルマンの優勝インタビュー第一声でもあった)力の発揮が繰り返される必要がある。田口にはめったにそれはおこらない、そこが違うだけで、過小に評価されすぎているとかねがね思っていた。守備力、バッティング、肩、走力、どれもイチローの80〜90%位の力は優にあると思うのだ。
 しかしメジャー5年間のアットバットは、ほとんど代打や守備交代後1〜2回の打席ばかりでたったの960回。しかし通算打率は.281である。これはかなり高い確率だと思う。盗塁29、FPCT(Fielding Percentage=守備率)は.979。
 たとえばイチローと比較してみる。イチローは6年間で、957試合、アットバット4096。通算打率.331。盗塁384。FPCTは.994。あらためてイチローの残した数字はすさまじい。というよりこれらの数字でイチローを上回る選手は(盗塁を除いて)おそらくメジャー史上ほとんどいないはずだ。
 
 田口は今ポストシーズン2打数2HR(!)。今日も2004年のリーグ優勝に続く2度目のリーグ・チャンピオンシップを戦っている。今7回。5-0の大量リードで2勝目は堅そうだ。あと2勝で2度目のワールドシリーズ進出。アメリカンリーグヤンキース、アスレチックスを破ったタイガースが4連勝で今日ワールド・シリーズ進出を決めた。田口は今日もベンチで出番を待っている。出番はないかもしれないがあらゆる準備を怠っていないだろう。
 今年こそ田口がチャンピオンリングを−−できればワールドシリーズでも活躍して−−手にすることを願ってやまない。