新庄剛志、野球人生のすべてを詰め込んでサヨナラと叫んでいるようなスイングだった。

 2006年の日本シリーズは4勝1敗で44年ぶりに日本ハムが制した。日ハムが北海道に本拠を移してなければ見てなかったかもしれない。
 4年も指揮を執って日本一に導いたヒルマン監督には敬服する。金村は観客やチームメイトより先に監督にこそ感謝すべきだろう。北海道のファンは落胆するんだろうが、オファーがあればメジャーでその手腕を見てみたいものだ。
 そして新庄。8回裏の選手生活最後の打席には感動した。「涙のフルスイング」。涙でボールなど見えなかったんじゃないだろうか。フルスイング3回で三振だったけど気持ちが入っていた。野球人生のすべてをかけて、サヨナラと叫んでいるようなスイングだった。当たれば間違いなくホームランだったと思う。すべて剛速球真っ向勝負に徹してくれた中日のピッチャー・中里の心意気にも敬意を表したい。シーズン早々に引退宣言して、最後の公式戦が日本シリーズ優勝。V9の巨人じゃないんだから、そんなことがほんとに起こるなどとは当の本人さえ思ってなかったに違いない。こんな幸せな野球選手はそういないだろう。まさに奇跡に近い。
 シリーズMVPに輝いた稲葉にも物語がある。ヤクルトを離れ、大リーグに挑戦するも、取ってくれる球団がなく、日本に戻ったところを日ハムに、半ば拾ってもらった選手である。それがこの活躍。彼の真摯な野球への情熱がこの結果を生んだのだと思う。
 この3人と北海道のファン。この組合せだからこそできた日本一だと思います。北海道のみなさん、おめでとうございました。
 蛇足ながら、確かにこのシリーズはどの試合も面白かった。レギュラーシーズンも毎試合これに近いくらいの緊張感と集中力でやってくれたら、プロ野球も人気を取り戻せると思うんだけど・・・