灰谷健次郎さんのご冥福をお祈りします。

 本日11月23日早朝食道がんのため72歳で亡くなられたとのニュースを見て、驚きました。「兎の眼」「太陽の子」などを書かれた、いわずと知れた児童文学作家です。
 高校生、いや大学生の頃だったか、あるいはもう少し後だったか−−今はもうよく覚えていないのですが、一時、「世の中に尊敬できる人というのはそう多くいないけど、灰谷健次郎という人は尊敬に値する数少ない人だなあ」と思っていた頃がありました。
 なぜそう思うようになったのか、それも今はもうはっきりわかりません。テレビにも以前はかなり出られては発言されていたから、そうしたことも影響しているかもしれません。
 けっこう何冊も読んだはずですが、今手元にあるのは「いま、島で」「はるかニライ・カナイ」だけです。最近はとんと読んでいませんが、読んだ作品にはどれも単純に感動したという記憶ばかりが残っています。
 「一元的にある人たちばかりを賛美しすぎる」とか「社会的背景が考慮されていない」とか、色々批判もあるようですが、(最近世間を騒がす税金と自分の金の区別もつかない公務員、収賄まみれの政治家、名ばかりの教育者などとと比べてみても)華美を排した生活ぶりや金で動かない作家態度には少なくとも共感できます。
 灰谷さん個人の生活や価値観などとの不整合などを指摘する評論もあるようですが、作品はあくまで作家本人の個性とは切り離して評価するべきでしょう。
 100歩譲って仮にいくつか欠点があったにせよ、灰谷作品の多くには読者を感動させる力があると私は思います。「理想」に過ぎる、といった批判もあるようですが、「理想」の語られない児童文学というものの存在する意味があるのかどうか。
 そういう批判が正しいのかどうか確かめるためにも「太陽の子」あたりを読み直してみようかと思います。何はともあれ、その作品に感動したことのある者として、感謝とともに、謹んでご冥福をお祈りしたいと思います。
太陽の子 (角川文庫)
はるかニライ・カナイ (理論社ライブラリー)