ラグビー、慶早戦。

慶応善戦。

 26-41−−近年まれに見る善戦だった。あまりの善戦ぶりに、ああもう少しで勝てたのにと思ってしまった。
 前半、早稲田は豊田のトライのあと、なななんと、曽我部がドロップゴールを鮮やかに決めた。去年も見た気がする。関東学院戦だったかな。カッコイイ。ドロップゴールはワールドカップではけっこう見るけれど(一体いつの話か自分でも不明)、日本では滅多にお目にかかれない。記憶にあるのは、はるか昔、松尾。そして平尾も決めた気がする。松尾は確かだ。意識して練習していないとできないプレーだ。曽我部はいつも狙っているに違いない。
 しかしこのあと慶応はがんばった。2トライ2ゴールで、前半間際に逆転し、14-13と1点差でリードしたまま後半を迎えることになった。ウイング山田は強いし粘りがある。しかも話を聞いていると根性も誇りもありそうだ。
 それにしても小田というキッカーには驚いた。慶応のキッカーと言えば伝統的に(?)真正面以外ほとんどゴールを決められなかった。しかし小田はすごい。この2本のキックはそれぞれ左右ライン際からのきわめて難しい角度のキックだったのに、なんだか楽々と決めた。慶応史上最強のプレースキッカーだと思う。

リードははかない夢だった。

 しかしながら、やはり、慶応のリードははかない夢のようだった。後半開始早々今村に逆転のトライを決められ、そのあとは怒涛の攻撃に点差は確実に開き、勝利のチャンスは指の間をするりとこぼれていってしまった。ただ、終盤、モールから押し込んだトライには正直目を疑った。この5年は少なくとも想像だに不可能だったことが、現実に起こったからだ。
 慶応といえば伝統の攻撃は一つ覚えのハイパント以外になかったわけだが、今日はなかなかボールを蹴らない。あげくこのトライ。たまげた。
 早稲田も清宮が監督を勇退し戦力も落ちたのだろうが、慶応の力もアップしたのだろうか。しかし今シーズンも早稲田は全勝。もっともこのメンバーではやはりまだ慶応に負けるわけにはいかないだろうというくらいのメンバーではある。
 五郎丸、矢富にもトライを決められノーサイド。でも今年は近年になく面白い、引き締まった試合だった。勝てる可能性を感じられた。今日の慶応のタックルは久しぶりに伝統の「魂のタックル」を髣髴とさせた。

大学ラグビーは美しい。

 日本で見られるスポーツの中で、最も美しいスポーツの1つは大学ラグビーだと思う。その大きな要因の1つは伝統の力といっていいだろう。試合前の控え室から出てきた選手の多くは目を真っ赤にして泣きはらしている。つまり、プレーの一つ一つに感謝の気持ち、魂が込められていて、少なくとも試合中に邪心はほとんど感じられない(ように思える)。まさに青春のはかなさと熱さ、悲しさや激しさ、すべてがそこに詰まっている。プレーに若さと自由が満ち満ちている。普段はもちろん普通の大学生なわけで悩んだり詰まんないことしたり少しは悪さもしてるかもしれないが。
 それから、秩父宮ラグビー場の美しさのポイントは大きい。あの目にしみる芝生の青さ。息や声が聞こえるスタンドの近さ。大学−−特に関東大学ラグビー−−の主戦場である。イチョウ並木、周囲の環境、表参道を歩いて向かうその道中まで格別に楽しい(岐阜からわざわざラグビー観戦にはいけないので今日はもちろんTV観戦です)。
 にもかかわらず、今ラグビーはピンチだ。テレビ放映はほとんどないし、ニュースでもほとんど取り上げられない。大学ラグビーも、伝統の早明戦慶早戦、大学選手権と日本選手権の決勝以外スタンドが満員になることはない。ワールドカップでの惨敗で、日本人じゃとても外国には歯が立たないという思いが浸透してしまったことがその大きな理由だと思う。ルールが複雑なせいだとよく言われるし、実際そう思うけれど、いくつかの頻繁に起こるファウルを覚えたらあとは審判を信じればいいんです。やってる選手だってよくわかってないのがいっぱいいるくらいだから。そんなのはラグビーというスポーツの大きな魅力に比べれば小さなことだ。
 こんなに美しいスポーツを見ないというのは実にもったいないと私は思うのです。みなさん、ぜひ試合に足を運びましょう。スタンドで寒さに震えて飲むビールはまた格別にうまいんですから。