君は恵方巻を食べたか?

 「恵方巻」などというものを食べるなどと言い始めたのは、いったい誰で、いつごろからなのだろうか?
 家人が所用で実家に帰っているのだが、「節分には豆まきと恵方巻は必ず、忘れずにね」と言い残していったので、言いつけを守ってスーパーに出かけたのだった。「恵方巻」を含む海苔巻売り場は大盛況で、さすがにどこのスーパーもチラシを入れ、どこのコンビニも看板を掲げているだけのことはある、と驚いた。
 すくなくとも私が住んだり縁のある東北・関東・東海地方では、恵方巻などといい始めたのはほんのこの数年−−つまり21世紀に入ってからであることは間違いのないところであり、してみると、2月の食べ物にかかわるイベントがバレンタインデーだけでは売上目標に追いつかないスーパー、コンビニ、惣菜屋あたりが、日本のどこかの地方にあったイベントを目ざとく見つけて、さも日本全体の伝統行事であるかのごとく喧伝したものに違いあるまいと、私は見ている。
 しかし、良くも悪くも、日本人はご利益と名のつくものには弱いと見える。恵方巻の本来がどのようなものであるかなどにはとんと興味はないらしく、巻物なら何でもよし、それをどう食べればよいかも知らぬまま−−今年の恵方は北北西の方角らしい−−正月のかまぼこか数の子よろしく、価格が高かろうが関係なく、売り場に並べられるまもなく店員の手から、ありきたりの鉄火巻さえ飛ぶように売れていくサマは、面白かった。
 あなたは「恵方巻」食べましたか?