松坂大輔メジャー初勝利!

 今年のMLBの最大の楽しみは、もちろん松坂だ。とうとう今日デビューを果たし、見事に勝利を飾った。
 相手はカンザスシティー・ロイヤルズ。先発メンバーに知っている名前はほとんどなく、昨年の地区最下位。若い選手が多くまだまだこれからのチームだ。
 7回を投げ108球、ヒット6本、ホームラン1本、三振10、フォアボール1。マウンドを降りた時点では1点差(2-1)だったが、その後相手のエラーなども出て最後は4-1で勝ち投手となった。

 松坂の投球は芸術品のようだ。フォームのバランスがよく、スムーズでやわらかい。あまり速いようには見えなくても、球もちがいいからストレートは軽く150kmは出る。おまけに変化球は多彩で、決め所ではコントロールも良かった。何より安心してみていられるのは、カーブなどで簡単にストライクが取れるところだ。この試合でもあっという間に2ストライクに追い込むシーンが数多く見られた。それから、あらためて感じたのは、フィールディングのセンスが抜群だということだ。本当に守備がうまい。

 海外で大きな仕事をしてきた選手は、みんなデビュー戦で強烈な印象を残してきた。MLBでは、野茂、松井秀喜なんかがそうだし、サッカーでは何と言っても中田英寿
 今日の松坂は失点がソロ・ホームランの1点だけ。10Kは今日もセーブを上げたパペルボンのデビュー戦の7を上回るというテロップが出たが、快刀乱麻というほどではなかった。
 でもきっとそれが松坂なんだろう。瞬間的に爆発的なことをやるというより、長いシーズンを通して安定した成績を残し、またそれを続けていける、そういうタイプだ。怪我も少ないし、大崩れはしない。
 たとえば野茂は先発の座を確保するために、強烈なインパクトを最初から見せつける必要があった。彼はそれを意識し、伝家の宝刀フォークを多投して三振の山を築いた。その後も両リーグで各1回計2度のノーヒッターを記録する−−2度目はボストンのメンバーとして、キャッチャーは今日もマスクをかぶっていたバリテックだった−−など強烈な印象を残し、その野球に対する情熱とともに我々を熱狂させてくれた。フォームも松坂とは対照的に、特徴のある−−誰にもまねのできない−−トルネード。全米にノモマニアがあふれた。
 一瞬の激しいプレーや天才的な能力−−たとえばイチローのレーザービーム!−−、1試合ごとの驚異的な集中力の発揮のほうが我々をより熱くさせるけれども−−その点では今日の松坂にはつい物足りなさも感じてしまう−−歴史と伝統のあるベースボールの世界では、シーズン記録や通算記録も大きな楽しみでもあるし、結果として興奮させてくれる。野茂の成績だって十分立派だが、松坂は普通に行けばこれを超える成績を収めるに違いない。

 ボストンの試合をこんなにちゃんと観るのは初めてだ。野茂がいた頃も見ていたかもしれないがあまり印象がないし、ヤンキースとの伝統の一戦ヤンキース側から見ていたせいかあまりよく覚えていない。2004年に86年ぶりだかの世界一になって、あの年のレッドソックスは確かにすごかったが、何人かいい選手が抜け、昨年は位位置の地区2位さえ明け渡し、プレーオフにも出ることができなかった。オルティース、ラミレスの3,4番はメジャー最強に違いなく、ボストン・ファンにとっては悔しい思いが募っているだろう。
 1試合だけを見てあまりどうこうも言えないが、この試合を観る限り、ボストンには守備に緩慢なプレーが目に付いた。攻撃においても策というものがあまり感じられない。再三のノーアウトの好機も点に結び付けられず苦しい展開となった。良く言えばやりたい放題好き勝手に自由で伸び伸びとプレーしていたとも言えるが、このあたりに永遠のライバルと言われながら毎年のようにヤンキースに地区優勝を持っていかれる原因があるのではないだろうか。
 陽気なドミニカンが中心選手に数多くいて、みんな明るくおしゃれだ。ベンチではみんなBのマークが入った毛糸の帽子をかぶっている。ラミレスのドレッドヘアーしかり。ヤンキースではありえないだろう。そういうチームがあるのは見ているほうとしては楽しいが、チームとしてまとめていくのはなかなか難しい気もする。
 キャプテン バリテックはいい。野茂もピアッツァがいてくれてずいぶん助かった。やっぱりキャッチャーが信頼置けるやつじゃないとね。その点バリテックは身体を張ってキャッチしてくれるし、「日本語も覚えなきゃ」なんて言ってくれてた。強い意志も感じさせるがかたくなではない気がする。頼りになりそうだ。
 遊んでるように見えるけど、捕球から球を返すまでの動作がやたら速いラミレスも隙は少ない気がする。さすが超一流。途中6回くらいにベンチで松坂が隣に座った。ラミレスは話したそうにしていた(きっとガンバレとか言いたかったんだと思う)けれども、松坂はスペイン語も英語もしゃべれないし、さすがに試合に集中したいということもあったのか、タオルで汗を拭いては戦況を見つめるばかりで言葉をかわすシーンはなかった。けどラミレスもいいやつそうだ。
 今日の試合、4三振だったが、強打者オルティースは良く走って、エラーから貴重な3点目の得点をした。日本や松坂が好きらしい。これから本調子になれば打点・ホームランの2冠王の本領を発揮してくれるだろう。攻撃力はかなり高い。打つほうばかり大好きな野球少年的な心を持ったチームなのかもしれない。それはそれで悪くない。
 それから、クローザーのパペルボンは球が速くてキレがいい。今年も頼りになりそうだ。

 次の登板予定は、ボストンの本拠地フェンウェイ・パーク。相手はイチロー、城島のいるマリナーズ。これまた超楽しみである。