リベラ、岡島、そしてラミレス(06/4/21 BOS vs. NYY 7-6)

今年のA・ロッドはとんでもない成績を残すかも知れない

 伝統のボストン・レッドソックスニューヨーク・ヤンキースatフェンウェイパークの第一戦は久しぶりに終始面白い、楽しい試合だった。
 まずはA・ロッド。1-0からグリーン・モンスターを越えてゆく特大のホームラン。バリテックの2ランで同点となった後の5回は、2打席連続の3ラン・ホームラン(試合は5-2)。ヤンキースに移籍後、すごい成績だけどもうひとつぱっとしない印象だった−−レンジャーズ時代があまりにすごすぎたせいだが−−が今年はものすごい成績を残すんじゃないだろうか。どんなすごいことになるか楽しみになってきた。現在ホームラン・打点はダントツのリーグNo.1である。

クールでカッコいいリベラの復活を待ちたい

 しかし、だ。野球の行方は一筋縄ではいかなかった。ヤンキースは、8回に1点を追加。ボストンの相変わらずのつながらない打線からみて、その勝利はかなり確実なものに思えた。しかしそういうときこそ落とし穴が待っていたりする。
 おそらくは今年もヤンキースブルペン(控え投手陣)は磐石ではない。8回、不調のラミレスをフォア・ボールにしたところで、4番手ビスカイーノから早くもリベラにスイッチ。
 リベラはもちろんMLBを代表するクローザーである。とにかくカッコいい。クールである。あくまでも、どこまでも。ボールの切れ、コントロール、言うまでもなく見事である。身体のバランスがすばらしい。無駄のない美しいフォーム。登場の仕方、雰囲気。もうほれぼれする。しかし、前の試合ではキャリア4本目(!)となるサヨナラ・ホームランを打たれ降板したという。
 キャリアったって並大抵のキャリアではない。ヤンキース一筋13年目。726試合に登板して、413セーブ、60勝42敗。ホームランは今年の1本を入れても42本しか打たれていない。つまりホームランを打たれることさえ年に数度しかないし、ましてサヨナラ・ホームランなんて3,4年に1回しかないことなのである。
 今年38歳だし、確かに歳はとってきたが、まだまだいけるはず。「この試合で汚名挽回だ!」とTVの前で息巻いた私であったが、なんと、なんと3連打で逆転を許してしまう。
 信じられない。リベラが3連打されるなんてシーズンに1度あるかないかだろう。そんな試合を見てしまったという、悔しいけれど嬉しいような複雑な気持ちである。

ニエベスはなかなかいいキャッチャーだ

 伏線としてはポサーダが太ももを痛めたとか何とかで、ニエベスというキャッチャーに既に代わっていたということもあるかもしれない。
 しかし、このニエベスというキャッチャーはなかなか肩のいい(すばらしい送球で2つも捕殺した)いいキャッチャーのように素人目には見えた。急遽出場にもかかわらず落ち着いていたし。ただ、やはり経験がものをいうポジションだから、リードなどの面で多少の違和感は否めなかったかも知れず、同じく予定外の8回1アウト(ご存知のようにMLBではクローザーはほぼ1イニングしか投げない)からの登板のリベラにとって、前試合の嫌な感じも残っていたかも知れず、少なくともいいことではなかった(後から思えば、だけど)。

この試合で男になった岡島

 1点差の9回、当然普通なら抑えのパペルボンが出てくるところだが、フランコーナ監督はなんと岡島をマウンドに送る。このところの完璧なピッチングで信頼を強くしていたことは十分考えられるが、地元での最初の宿敵ヤンキース戦。逆転したとはいえ僅か1点差の9回である。本番の厳しい局面で結果を出せるかどうか−−もちろん出せると信じてなわけだが−−を見極めたい、というフランコーナのある意味では賭けでもあったかもしれない。そういう意味でここで結果をきちんと出して男になった岡島には大きな拍手を送りたい。バックネット裏のボストンの観客もみんな立ちっぱなしで、応援し拍手を送っていた。松坂もおおはしゃぎで、実に嬉しそうだったなあ。
 アブレイユにフォアボールは出したものの(かなりきわどいコースをボールに取られた)、ジータ、A・ロッドを打ち取り、最後の打者は空振りの三振。岡島が本当にボストンの一員に、MLBの一員になった瞬間だった。パペルボンの登板間隔などがわからないが、サブのストッパーとして、いざというときは岡島が使えるし、負け試合ではなくクローザーにつなぐ重要な局面で、今後岡島が確実に使われていくことになると確信する。これは、やはりブルペンが弱点といわれているボストンには大きな収穫である。

そして私の大好きなラミレス

成績的には、「おまけ」扱いにせざるを得ない、今日の、そして今シーズンここまでのラミレスではあるが、ボストンで、見てて一番楽しいのは私にとってはラミレスである。
 ラミレスは「他人と同じなのはつまらない」と思うタイプだ。その強烈なスタイル。MLB一汚い松やにだらけのヘルメット、赤髪を織り込んだドレッドヘア、グローブもおしゃれだ(球を受ける部分が青い皮だった)。今日は守備の際、緑の(!)野球帽ではなく、濃紺のニット帽をかぶっていて、びっくりした。上にかぶっていた帽子が脱げてしまったんだろうか?注意をされたのかなんなのか、次に画面に映ったときはちゃんと帽子をかぶっていたが。
 毎年準三冠王的な成績を収めてきているラミレスだが、今のところホームランはたったの1本、打率は2割を切っている。しかし飄々としている。レフトの守備は「あまりうまいとはいえない」という評価らしいが、私はそう悪くないと思う。特にフェンウェイパークではグリーンモンスターの特性を熟知しているためだろう、非常にうまいプレーをしていると思う。肩だってけっこう強い。
 見てて特に楽しいのは、打球を獲ってから内野に投げるまでのスピードが恐ろしく速いところだ。遊んでるといえば、そうなんだろうが、外野手がとった球をすばやく内野に戻すのは守備の基本だから、もちろん実際的な意味もあるプレーなわけだが、これがあまりにすばやすぎておかしい。
 とにかく打席でも、フィールドにいても、ベンチにいても見てて楽しい選手だ。元同の僚のデーモンやジアンビと違って、彼はヤンキースにだけは行かないだろうな。だって、そういうことは全てヤンキースではタブーだろうから。

 でも私は松井秀喜ジータも大好きだし、やはりこのカードは見逃せないベスト・カードに違いない。あさっての松坂の登板では松井との対決はもちろん見ものだが、そろそろマニー(ラミレス)の爆発が見られるんじゃないかと大いに期待しています。