岡島が勝利を呼び寄せた! ワールドシリーズ第3戦 BOS vs COL (10-5)

 松坂のワールドシリーズ初先発、西武育ちの松井・松坂のワールドシリーズ日本人初対決と何かと話題の多い第3戦だったが、この試合を分けた一番のポイントは岡島だったと私は思う。

松井稼頭央はすばらしかった。

 私自身は、世間で騒がれているほど、そういう話題に興味は湧かない。これだけ日本人が多くなったのだから、日本人対決など時間の問題だし(解説の田口は「歴史的瞬間」と言っていたから、自らMLBに身を置くプレーヤーにはまた別の感慨があるのかもしれない)、今更日本人がどうなどという感覚が私にはつまらないことに思える。MLBの、しかも最高の舞台で、そんなことはどうでもよいことであって、プレーヤー個々が存分のプレーを楽しんでもらいたいし、この美しいボールパークで行われる祭りの場で発揮される彼らの真摯でスーパーなプレーを楽しみたいだけである。
 松井はこの日も集中していた。しかもホームに戻り、舞台慣れしたせいもあり、バントヒットを決めるくらいの余裕も生まれていた。「松坂」を意識しすぎるそぶりもなく、自分のプレーをした。3年間の苦労と、それを乗り越えてきた経験が、そういう精神状態と正確な技術を支えているのが見て取れて嬉しくなった。両軍唯一の3安打は立派だし、当然の結果でもある。

松坂WS初勝利おめでとう!来年は8回くらいまでコンスタントに投げれたらいいなあ。長く見たいし。

 対する松坂は数字だけ見ると悪くないけれど、やはり「やったー!」と諸手を上げて喜べるピッチングには今回もならなかったのが残念だ。何でこう判を押したように6回につかまってしまうのか? 勝利投手の権利を得たからじゃないかと言うような意地悪な憶測も呼びかねない。私は松坂はそんなちっちゃな男ではないと思っている。球数が多くて100球前後にちょうど到達するせいなんんだろうか? しかし100球超えてからさらにギアをアップするような投球こそ松坂の本来の姿でもある。してみるとやはり疲れから5回あたりでパワーダウンしてしまうような状態に見も心もあるというのが素直な見方かもしれない。「思っていた以上に中4日のローテーションがキツかった」というようなことを本人も言っているらしいし。
 この試合では1アウトから連続フォアボールで降板。100球を超えたこともあるだろうがフランコーナの決断は早かった。短期決戦の定石には違いないが、岡島が交代早々3ランを打たれた場面と比べると、二人に対する信頼感の微妙な違いが浮き彫りになる。ただ、しかし、ワールドシリーズに先発するポジションを得ること自体が難しいわけだし(たとえば伊良部はロースターに入れなかった)、たった3安打で勝利投手になり、歴史に名を刻んだわけだから、これはすごいことだということにはまったく異論がないし、ボストンの人たちからも祝福してやってもらいたいと思うのだ、(1億ドルには・・・というような)但し書き抜きで。

岡島がロッキーズの勢いを止めた。2戦に続いて岡島こそ勝利の立役者だと思う。

 5回終わって6-0。この試合は、さすがに岡島の登板はなく、休めるといいなあ、と思っていた。しかしそう簡単には問屋が卸さなかった。松坂の連続フォアボールでピッチャーはロペスに交代。1アウトも取れず、ティムリンも2イニング目の7回にヒットを打たれ、ランナー2人がいるもののノーアウト。まだ4点差あるにもかかわらず、フランコーナは迷いなく岡島にスイッチした。
 この勝負のポイントはやはり岡島にあった。岡島はナ・リーグ2冠王のホリデーにいきなり3ランを打たれた!、それもバックスクリーンに特大のやつだった。岡島の落胆は察して余りあるが、フランコーナは計算の範囲内だったと見る。ここでホームランを打たれてもまだ1点勝っている。なんといってもノーアウトなのだ。ランナーがいなくなり岡島はさらに次のヘルトンにヒットを打たれてちょっとドキっとしたが、球も思い切りも解説の二人(梨田来期日本ハム監督と長谷川滋利)が言うほど悪くは見えなかった。結局次の2人を連続三振に切って取り、次の打者も打ち取ってビシッとこの回を終わらせた。大事なのはこの回逆転もしくは同点にされないことだったのだ。フランコーナの期待通り、岡島は勝ったままこの回を「終わらせた」。フランコーナはホームランを打たれてもまったく岡島を変える気配はなかった、この回は岡島に預けられていた。ここにセットアッパーとしての岡島に対する絶対的な信頼が読み取れる。
 私は接戦のままならまちがいなく次の8回も岡島が行くと思っていた。8回いけるところまでいき、あとはパペルボンでしめる。競った試合では他に登板させるピッチャーはフランコーナの頭にはない。
 しかし、このこのあとの攻撃でレッドソックスは3点を追加。岡島は晴れて(表情は暗かったが)お役御免。ビシッと3者を岡島が討ち取って、ロッキーズの勢いを止めたことでリズムが戻ったことがこの結果に大きく影響したといっていいだろう。あとを受けたデルカーメンは、2アウトをとるのにキュウキュウとしたが、パペルボンに死角はなく、この日も2イニングにまたがるが、圧倒のピッチングで締めくくった。レッドソックスは3連勝。次は誰が投げるのかわからないが、最も遅くとも、ベケットが登板する試合でレッドソックスがワールド・チャンピオンになることはもう間違いない。