男子マラソン、ケニア ワンジルのスピードはけた違いでした。2時間6分32秒のオリンピック・レコード。

 いやあ、たまげたレースでしたね。夏のマラソンで終盤では30度近い暑さの中、最初の5kmから14分台のラップ、たしか20km近くまで5人以上の集団でした。そのほとんどがケニアエチオピアエリトリア、モロッコなどアフリカの選手たち。これまでのオリンピックとは、そのスピードだけでなく顔ぶれでも様相が一変していました。
 優勝したワンジルは、放送でもさかんに紹介されていましたが、日本の高校、実業団で活躍し、ハーフ・マラソンの世界記録を持っていることで有名な選手。最初から集団を引っ張り、最後までこのレース全体をコントロールしていました。それでもってこの記録、金メダル。すごいです。

尾方、佐藤には酷なレースでした。

 日本の尾方、佐藤には酷なレース展開でしたね。それでも尾方は自分らしいレース展開でイーブンペースをほぼ守って終盤順位を上げ13位。ただタイム的には全く物足らない残念な結果でした。レース後のインタビューの冷静さ、明晰さには驚きましたが。
 佐藤にはさらに厳しい大会になってしまいました。途中リタイヤした選手を除くと最下位の76位。2時間41分8秒。おそらく彼が走ったレースでは断トツの遅いタイム、順位だったに違いありません。オリンピックということで完走を目指したのでしょうが、間違いなくどこかに故障なりがあったのだと思います。コーチや関係者は握手をして完走をたたえていましたが、あれだけの代表争いを繰り広げ、耳目を集めた結果としてはやはり残念です。

この金メダルでワンジルがいい環境を手に入れられるといいですね。

 日本語でインタビューに答えたワンジルは「日本で学んだことで一番役になったことは?」と聞かれ、「がまんすること」と答えました。うーん、なるほど。でも何か少しでも役に立ったならうれしいよなあ、よかったと素直に思いましたね。私が一番よかったと思った話は、所属していたトヨタ自動車九州の監督、ソウルでしたっけ銀メダルをとった森下監督が「おれは銀しか取れなかったけど、おまえは金メダルを取ってくれ、といつも言ってたから喜んでくれると思う」と話してくれたことですね。正確ではないかもしれませんが、マラソンにもっと出場したいワンジルと、実業団チームとして当然ですが、駅伝などの団体戦を優先したいチームの方針が合わず退部届を出したというような報道があったと思います。そんななか、日本に少しでも感謝してくれて、日本の競技生活が少しでも彼のキャリアに役立ったなら、部外者ながら、とてもうれしい気持ちです。
 ケニア初のマラソン金メダルおめでとうございました。