岐阜おおがきビエンナーレ2008 「祈りの言葉 2008.9 岐阜県大垣市」と「Transparent」、まずは2つの展示を見ました。

 9/19日に開幕した「岐阜おおがきビエンナーレ2008」。9/28(日)までさまざまなイベントが繰り広げられるほか、「おおがきライヴラリー」と銘打って、こちらは23日まで、ヤナゲン本店横の「がんのり橋」、市中水門川の「貴船広場」、「大垣城ホール」を主な会場として、和太鼓、ロック、ブラスバンドなどの演奏が行われます。

「祈りの言葉 2008.9 岐阜県大垣市


 古い店舗の白い床・壁、一枚の布に縦横無尽に黒字で書かれたお経、もしくは呪文のような文字の連なりが作り出す流れるような動きの航跡は、宮崎駿監督のアニメ「となりのトトロ」に出てくる「まっくろくろすけ」があわてて逃げだした残像のようです。時代を経てなおそこにある古い建物という空間がもつ力と作者・内藤絹子さんから湧き出てきた言葉(作品のタイトルからすればそれは「祈り」の言葉なのでしょう)とのコラボレーション。地名が刻まれた養老天命反転地の一角を想起したりもしました。言葉のもつ力を時空に埋め込む作業と言ってもいいかもしれません。

「Transparent」


 御歳78歳、大垣在住の写真家 河合孝さんが撮影された昭和30年代の大垣の輪中風景と1963年生まれの真月洋子さんの水面を映した連作を組み合わせた展示。河合さんの写真に写った風景は、今では全く見られなくなってしまいました。水都・大垣という名に刻まれた意味の多様性を気づかせてくれる写真です。時とともに失われていくのは何も動物や植物ばかりではない。そのころ大垣では田圃を作るのに土を掘り起こしその上に稲を植えたとスタッフの方が(おそらくはこのビエンナーレの企画・運営の中心であるイアマス(=情報科学芸術大学院大学岐阜県立国際情報科学芸術アカデミーの総称)の先生でしょうか)教えてくれました。「堀田」と呼ばれる土地の造形、また小舟を操って農業をおこなう人々の暮らしは、今ではまったく失われており、河合氏の写真が水都という名が孕む多様な文化をまさに掘り起こしているということでもあるのです。
 水につかった乳母車から赤ん坊を抱き上げて乳を飲ませる母親を写した写真が1枚ありました。木村伊兵衛の「秋田」という写真集の女性がすぐ思い浮かびました。やはり昭和30年前後の秋田の農村の風景や人々を写したものです。共通する女性の凛とした美しさは気品さえ感じるほどです。
 展示・イベント会場は、大垣駅から真南に延びるメインストリート沿いにほぼ展開しています。この通りは大垣のランドマークである大垣共立銀行本店までほとんどがアーケードとなっていますので、今日のような雨でもあまり気にせず楽しむことができます。ぜひ多くの方々に足を運んでもらいたいと思います。