伊達さん、優勝おおめでとう。が、しかし・・・

 今年のテニス全日本選手権クルム伊達公子選手が復帰したその年に優勝して幕を閉じました。私は伊達さんのファンですが、日本のテニス界の出来事として考えるならばこの優勝には手放しで喜ぶことはできません。
 「今の女子テニス界の実情にカツを入れる」という復帰のもくろみ通りといえば、そういうことなんでしょうが、かつては世界ランク4位のすごい選手だったとしても12年ぶりに復帰した38歳の選手にやすやすと優勝させてしまうのでは、申し訳ないが、この大会に参加する現役選手の存在意義−−もちろんテニス・プレーヤーとしてという意味です−−は厳しいようですがないに等しい。
 伊達さんの優勝は何にせよ立派です。杉山が出ていないといっても、その価値がいささかも劣るものではない。杉山には世界で戦う上の戦略があるはずで、その上でのエントリーでしょうから。
 つまり伊達さんの力は12年のブランクを経て38歳でも日本では2番目に強いということにほかなりません。これはいかに日本の女子の若手が育っていないかということの証明でもあります。
 伊達さんの体は、見た目にもあっというまに全盛時に近いくらいに絞られている気がします。すごいトレーニングを急ピッチでしたのでしょう。心から敬意を表します。しかしながら、テニスは肉体的にかなりハードなスポーツです。ゴルフなどとは明らかに違うし、野球と比べたって肉体の消耗度は激しいでしょう。スポーツ、特に相手のある勝負では、心理的な要素の重要性はもちろん高いわけで、その部分で経験がものをいうとはいえ、日本の若手は意地でも伊達さんの優勝を阻止しなくてはならなかったと私は思います。
 これで世界に出て行ってTOP10に肉薄するようなことがあれば、私はもう女子テニスは見なくてもいい気がします。世界はまちがいなくそれほど甘くない−−伊達さん自身も復帰以来そう言い続けてきたわけですが−−と思います。
 それはそれとして、伊達さんの努力にはやはり頭が下がる思いです。あっぱれ。