フィギュアスケート グランプリファイナル2008/2009

真央ちゃん逆転優勝!

 女子初のトリプル・アクセル2度成功、ということのすごさは実際のところ競技者でないとわからない。われわれ見る側の人間はそれを成し遂げた選手がいまだかつて1人もいないという事実からその難しさを推し量るだけだ。たとえば、女性で初めて高橋尚子がマラソンで2時間20分を切った、ということと同じくらい価値があるのかもしれない。そして浅田真央は−−というか真央ちゃんはそれをこの大会で見事に成し遂げた。
 それにしても地元開催となった3連覇を狙う金妍児のプレッシャーはすさまじかったに違いない。あのファンの熱気は異常だ。ショート1位と言う結果が出てキス&クライを離れる時の涙がそれを物語っている。この日も、相変わらずスピード感のあるスケーティングでジャンプを次々と決め、「これはいい勝負になるかもな」と思った矢先トリプル・サルコウが1回転となり、さらに転倒。それでもなお得点は思いのほか肉薄したが、演技終了後自ら負けを認める悔しげな表情を見せて結果は明らかだった。

安藤美姫の演技は立派だった

 安藤は新しいプログラムを初めて披露した。曲はサン=サーンス交響曲第3番「オルガン付き」(だったと思います)。おそらくは五輪へ向けた布石と見る。次から次へとトリプルジャンプを繰り出す意欲的な内容だったし、コンビネーションが単独のジャンプになったところがあったほかは、さほど大きなミスもなく滑り終えた。結果は最下位だったが、大いに今後を期待させる内容だったと思う。回転不足の認定だったが4回転にチャレンジしたことも含めて何よりポジティブな姿勢が高く評価されるべきだろう。最近の安藤美姫に最も足りなかったものだ。

ポジティブと言えば小塚の2位はまた優勝に匹敵する内容だった

 いつのまにこんなに成長したんだろう、というくらい今大会の小塚は素晴らしかった。ショートは完ぺきな演技で1位。フリーでも4回転にチャレンジした姿勢はすばらしいと思う。ミスはあったが演技全体のスピード感、安定感、はつらつさは魅力を発散させていた。
 優勝したアボットもミスがなかったというのは素晴らしかったけれども、4回転を飛ばずにチャンピオンになってはいけないだろう。数年前にはヤグディンプルシェンコ、昨年のランビエールや高橋、フリーを棄権したフランスのジュべールと、男子では4回転を飛ばずに世界を制することはできないはずだ。ジャンプだけでなく演技全体の質、もしくは感動と言う点でも、小塚を除いて今大会の男子はまったく物足りなかった。

シリーズも含めて最もゾクッとした瞬間

 全部見たわけでもないので、それがベストかどうかわからないが、NHK杯で真央ちゃんが飛んだ1つ目のトリプルアクセルは繰り返し映し出されるVTRでも何度も見せられたがそのたびにゾクゾクしてしまう。何故かはわからない。できは素晴らしかったと思うけど、ファイナルのフリーの2度のトリプルアクセルだって凄かった。これが私にとっては今シーズンのグランプリシリーズの白眉でした。