全豪オープン・テニス 男子セミファイナル ナダル対ベルダスコは史上最長5時間14分の熱戦でした。(6-7、6-4、7-6、6-7、6-4)

ナダルのすごさ

 ベルダスコなんて言う選手は知らなかった。スペイン人でナダルとも友人なのだという。今日は5時20分からこの試合がLIVEで放送されているのは知っていたが、ナダルの勝ちをほぼ疑っていなかったし、見るつもりがなかった。
 たまたまチャンネルがWOWOWになったら、どうやらまだ試合をやっている。もう9時半を回っていたのではないだろうか。第4セット。そしてこのセットはタイブレークへ。ベルダスコは神がかったようなショットでナダルを圧倒。7-1でこのセットを奪った。
 しかし私はこのタイブレークを見ながら、明らかに押しているベルダスコのサーブの速さや、ナダルを上回る(!)ショットの威力のすごさに驚嘆しつつも、もっと凄いと思ったのはナダルのいつも通りプレーし続ける精神のタフさだった。ぞっとするほどのすごさを感じた。

岡田ジャパンとの違い

 サッカー日本代表の岡田監督はこのところずっと「相手は関係ない。自分たちの目指すサッカーのコンセプトが明確にある。大事なのはその理想と比べて実際のゲームで何ができて何ができなかったのかをしっかり把握して、次の試合で修正することだけだ」。この話を最初に聞いた時はちょっと感動した。
 しかし残念ながら、その理想への道は今のところ遥か遠いということを、先日のアジアカップ予選のバーレーンとのアウェイ・ゲームでも露呈した。それは言うほど簡単なことではない(岡田監督はもちろん簡単でないことは重々承知だと思う)。
 つまり相手の力や試合の展開などに惑わされないで自分たちのプレーをし続けることは至難の業である。そこに超一流と一流あるいは二流三流との差が明確になる。ごまかしはきかない。

駆けだし市民ランナーのつぶやき

 といいつつ、ランナーとしてまだまだ駆け出しの身でこんなことを言うのははばかられるが思ってしまったので書いてしまう。マイペースを守って走ることがどれほど難しく、またどれほど重要かということは私のような駆けだし市民ランナーでもわかる。普段の練習と違って、レースとなれば欲が出る。抑えようと思っても沿道の声援を聞きながら自分のペースよりも速くなってしまう。周りのペースに負けまいとしてしまう。
 こうして特に序盤にオーバーペースになって息が上がってしまうともうそのレースは苦しいばかりになってしまう。
 東京国際で独走しながら最後の10kmで失速した渋井陽子が、大阪国際では序盤のスローペースを無理せず体力を温存しつつ自分のペースとして飼いならした結果、後半自然なスパートをかけ圧勝した。これはこれでちょっと感動した。いいレースだった。
 しかるに、このレースでは最大のライバルが初マラソンの赤羽。世界選手権で優勝争いをするには、強い選手と一緒でも同じように相手のペースを自分のペースとして納得させ(そのためにストレスを感じてしまうようだとうまくいかないだろう。実際スローペースの展開となった五輪の選考レースで渋井は惨敗した経験がある。彼女はスローペースを納得していなかったからだと思う)、足のダメージを抑えて後半必ずやってくる勝負どころにその脚を使えるかどうかここが勝負だ。
 42.195kmは神が采配したと思わざるを得ない微妙な距離なのだと思う。よほどの力の差がない限り独走してそのままトップでゴールテープを切ることはできない。「できない」と言うことがおそらく渋井には納得できていなかった。

ナダルは自分のテニスを続ければ最後は勝てると誰より信じていた

 ナダルに戻ろう。私は第4セットのタイブレーク2ポイント目、3ポイント目と自分のサーブをブレークされ、その後もポイントを続けて取られて6-0になるまでのナダルを見ていたが、極端にいえばこのセットがそのまま奪われようがどうなろうが関係ない、1つ1つのプレーを全力でやりきることだけに集中していたと見えた。恐ろしいほど冷静だった。あの誰よりも熱かったナダルが、である。
 ブレがゼロということは人間だからありえないが、今のナダルは誰よりもそのブレが少ない。ものすごい練習に裏打ちされた自分への信頼がないとできないに違いない。彼は自分のできるプレーをやり続ければ、途中の経過がどうあれ、最後は必ず勝てることを信じて疑わない。
 そういった態度が結果に結びつくためには自分のプレーを誰よりも正確に評価できるナダル自身がいる必要がある。
 決勝はまたしてもフェデラーナダルを破るのは今のフェデラーにとってはおそらく楽な仕事ではない。