欧州チャンピオンズリーグ決勝。バルセロナ対マンチェスター・ユナイテッド(2-0)。そしてキリン・カップ。高原。

ルーニー、玉田、そして代表初出場・山田

 昨夜は蒸し暑くて朝方早く目が覚めてしまった。何の気なしにつけたTVでサッカーの試合をやってる。「うん?昨日のキリンカップの録画かな?」と目を凝らすと、どうもスタジアムの雰囲気が全然違うし、「LIVE」の文字が映ってる。見覚えのあるエンジとブルーのウェア! おおっ、まさかチャンピオンズリーグ。そろそろ決勝じゃなかったっけ。
 「いやあ、ずいぶんスピードのあるディフェンダーだなと思ったら、なんとルーニーがここまで戻ってディフェンスしてたんですね」とアナウンサーが言う。解説の風間さんが「いやあ、本当に早かったですね」と応じる。これこそいつだったか川渕キャプテンが「玉田には腹が立って仕方がない。ルーニーだって戻って守備をしてるのに」と怒ったというまさに同じシーンだ。
 それにしても、故障上がりとはいえ昨日の玉田はさえなかった。最後はボールを蹴ろうとしてピッチを蹴り足を痛がってた。直後18歳の「日本のワンダーボーイ(とTVでは言っていた)」山田にチェンジされた。

史上最強のマンUを自在勝手なサッカーでほんろうしたこのバルサこそ史上最強かもしれない。

 というわけで、私が見たのは後半も途中からにすぎない。幸運だったのは今シーズンのチャンピオンズリーグ得点王をほぼ手中にし(この日の得点で9点に伸ばし得点王となった)、おそらくはバロン・ドールも手にするであろうメッシのヘディング・シュートに間に合ったことだ。
 鋭いシュートではなかったが、完璧なコースにコントロールされ、ゴールマウスに吸い込まれるずいぶん前にファン・デル・サールはあきらめざるを得なかった。
 1点目はエトーのゴールだったらしい。この放送で知ったが、マンUは同リーグ史上初の連覇がかかっていた。ルーニー、C・ロナルドといった攻撃陣に、イングランド代表を山ほどそろえた鉄壁のDF陣。中盤には韓国代表・朴智星もいる。前半はロナルドもロングシュートなど派手に打ちまくったみたいだが、後半はあまり目立った動きはできなかった。
 それにしてもバルサのパス回しの正確ですばやいこと。マンUのパスが大雑把に見えてしまうほど、ピタピタ狭いコースをすり抜けて、決まってゆく。そうかと思えば大きなサイドチェンジ。
 先制され、追加点を奪われるという試合展開。プレミアリーグなどすでに3冠を手にし、4冠、2連覇、25試合負けなしというあまたのプレッシャー。そういう背景もあってのことではあるだろうが、確かにマンUは押されていた。

バルサというチーム。そしてスペインという国。

 メッシ、アンリ、エトー。シャビ、プジョル。まあとにかく両チームとも世界屈指の国の主力代表選手が綺羅星のごとく並ぶ。一方で、カンテラと呼ばれる下部組織から育てられた選手が最も多いのもバルサなんだそうだ。スペインとそういうシステムが結びつくということに多少の違和感を覚えないではないが(良い意味でのラテン的なおおらかさをイメージしがちだ)、サッカーの世界ではスペインは先進国なのである。
 最近はサッカーだけではないのかもしれない。スポーツでも、テニスやヨットなどは目覚ましい活躍があるし、ファッション・アパレルなどビジネスでも世界的な会社があったはずだ。
 そんな風に考えてゆくと、日本も今や日本人が思っているほどグローバルな影響力が維持できているのか疑わしい。
 時代は刻々と移り変わっているのだろう。バルサにしてもロナウジーニョの時代がもうすでに遠い昔のような気がする。そのロナウジーニョはワールドカップ予選の不振で代表を外れたと伝わっている。

キリンカップ。日本対チリ(4-0)。本田の自信に満ちたプレー。

 時間的にはこちらが先だが、昨夜の日本代表は、もうひとつのサッカー大陸・南米の古豪・チリを相手に4-0と快勝。相手にほとんど大したことをさせなかった。ホーム・ゲームということを差し引いても、最近では最もいい出来だったのではなかろうか。
 この相手にこんなに簡単に勝てていいんだろうか−−そんな風にさえ考えてしまうほどすべてがうまく行った試合だったのではないか。俊輔も闘莉王も内田も長友もいない。どちらがサブとかいうのは難しいが、久しぶりに先発で見る選手が多かった。
 岡崎の2得点は立派だ。岡崎は確かに今の日本の攻撃陣で最も決定力があるといっていい。ポジショニングもシュートも正確だ。阿部のヘッドも実に正確で高さがあった。久しぶりに阿部の攻撃センスを確認した思いだ。
 しかし、なんといってもこの日最も積極的だったのは、VVVフェンロをキャプテンとして率い2部ながらリーグ優勝を果たし、来期は間違いなくどこかの1部リーグで戦う本田だった。アシストに飽き足らず、とうとう後半ロスタイム、自らゴールを決めてみせた。しかも山田のアシスト。

世界最高のステージでバルサが見せた最強の証し。

 勝利を祝福する気持ちになんの迷いもない。ただ、この2つの試合を続けて見て思ったのは、まず、ステージの違い、ということだ。
 キリンカップは本当に素晴らしい大会だと思うけれど、日本は常にホームで戦える。W杯予選を戦うさなかゆえ、ただのAマッチとは意味が違うから、お互い真剣ではあるだろうが、この1試合に賭けるわけではない。
 欧州チャンピオンズリーグ決勝。それはワールドカップの決勝に勝るとも劣らない、いやクラブチームの事実上世界一を決するに等しいこの大会の決勝こそ、世界一レベルの高いサッカーが見れるW杯を上回る世界最高の大会である。しかも、この顔合わせ。その舞台で(その舞台だからこそ、かもしれない)、あのサッカーを見せられては、他のどんなサッカーも色あせてしまうのはやむを得まい。

最後に。高原を代表に呼ぶ気はないんだろうか?サポーターの声はないのか?

 最近はJリーグでも話題にのぼることがめっきり少なくなり、久しぶりのニュースが人身事故。24日の大宮戦に2カ月ぶりに先発したようだが、皮肉なことに18歳・山田の代表入りのおかげで巡ってきたチャンスだった。
 今季リーグ戦12試合出場で無得点では、呼ばれなくても文句も出ないんだろうが、故障さえないなら、高原は日本屈指のストライカーのはずだ。ワールドカップへの熱い思い。そのための長年の努力もよく知っている。ワールドカップがすべてではないだろうが、カズのような思いをしてほしくないという気持ちが私には強くある。
 「勝負の世界は厳しい」−−そう言ってしまえばそうなんだろうが、FWの決定力が日本の最大の弱点であるという事実(チリ戦はこれを覆し得たのか?)を踏まえれば、高原にもう一度くらいチャンスがあってもいいんじゃないか、そう思うのはわたしだけなんだろうか。