「ゲド戦記1 影との戦い」読みました

謙虚を尊しとする姿勢

ファンタジーとしては誠実かつ真摯に書かれた物語だという印象です。「魔法使い」という人々が存在し、超人的な力を発揮するわけですが、それでも何でもできるというわけではない。ハヤブサに変身しても、長時間そのままでいると元に戻れなくなってしまうとか、船を出すにも魔法を使わないで自然の風を待つとか、そこにかなりの制限があります。そのあたりのさじ加減は、「ナウシカ」や「ハウル」などにも通じます。「ナウシカ」で風の谷のおじいさんが「わしらもちょっとは火を使う」という感覚です。そこには、自然など、人知の及ばない力というものがこの世には確かに存在すること、そうした力に対して自らの卑小さを自覚すること、「謙虚であること」を尊しとする姿勢があります。
 状況設定も架空の群島地域ではあるけれど、宇宙の果てではありません。この設定自体、神話に包まれた古代ギリシャの−−神々ではなく−−市井の人々の素朴な暮らしが投影されている気がしますし、物語の下敷きにはギリシャ神話や聖書などの影響と思われるようなところもあります。そこには作者の広く深い歴史や文化への造詣があるのだと感じます。

ファンタジーと想像力

 一度読んだだけでこんなことを書くのはおこがましい気もしますが、これほど評価の高い作品でさえ、特に細部の描写などに説得力(リアルさ)が十分でない思いがしました。物語が細部の描写の積み重ねで構築されている以上、それを軽視することはできません。あるいは、ファンタジーを読むには私の想像力がもともと足りないのかもしれないし、想像力を阻む多くの物事に触れてしまったからかもしれません。ファンタジーはやはり子供たちのものだという気もします。
 ただ、これがアニメーションになると、そうした欠点?を大きく改善できる可能性がある。絵は具体的な実体を持つからです。そしてジブリの作る絵の細部には手抜きがないからでもあります。
 昨日から映画「ゲド戦記」が公開になりました。試写評を新聞で読みましたが、評判は芳しくないようですね。「ブレイブ・ストーリー」の方が圧倒的に評価が高いようです。「ハウルの動く城」も公開後の評価はあまり高くなかったけれど、私は良かったと思っています。前売り券はゲットしました。この目で見て判断しようと思います。