おおがきビエンナーレ2008(http://www.iamas.ac.jp/biennale08/J/index.html)閉幕。今から2010年が待ち遠しいです。

 9/28(日)は朝から曇り空でしたが、なんとか雨は持ちこたえてくれました。最終日ということで、いくつかの展示やイベントに足を運びました。

大垣市多目的交流イベントハウス


 守屋多々志美術館の道向かいに設置された展示系イベントのメイン会場。先日立ち寄った「Transparent」と題された写真展に水面の連作を出されていた真月洋子さんのカラー写真が見られると教えていただいたので、まずはそれを目当てに出かけました。大垣と言う町の特性である、新旧、美醜など対立する概念が、対立と言うよりないまぜになった景観を切り取った写真展です。パンフレットによれば、真月さんはそれを「モザイクをつくるときに発生するわずかなノイズ」ととらえているようです。

 映像と音響によるインスタレーション作品「aquascope」も観ましたが、私にはあまり響かなかったです。そのほか参加型イベントの残滓としての展示があまたありましたが、残念ながらイベントに参加していない身にはほとんどがなんのことやらさっぱりわかりませんでした。

「Imajinary・Numbers」

 ぜひ体験したいと思っていた「サイトシーイングバスカメラ」なるイベントが始まるまで時間があったので、イベントハウスから少々離れていますが「GALLERYゆう」へ向かいました。ついでに近くに「すいぎょく園」というお茶屋さんがあった(実際は少々離れた場所でしたが)と思いつき、そこの抹茶アイスクリームでも食べようということになりました。
 コンピュータを使った木本圭子さんのアート作品には不思議な魅力を禁じ得ません。真っ暗な画面上に置かれた点の集まりである丸や四角をクリックすると、プログラミングされた数理的規則に従って図形が崩れ、構成する点が流れ出し、模様を描きます。その描きだされた模様を作家の感性で瞬間的に定着させた静的なイメージと、動きの面白さをそのまま見せる動的な作品とが展示されていました。
 解説していただいたスタッフの方によれば、動的な作品では今回は5つくらいのプログラムによって順次動いているそうで、時には膨張する宇宙の姿のようだったり、時には宙空を切り裂くイナズマのようであったり、はたまた花火のようであったり、水面に落とした水滴の広がりであったり。見ていて飽きません。
 今回のビエンナーレでもさまざまなサポートをされている「田中屋せんべい総本家」の2階にある展示スペースにも「Imajinary・Numbers」の展示があると教えていただき、抹茶アイスクリームを食べて休憩後、足を運びました。
 余談ですが、ここでお会いしたお二人のスタッフは、共に9/21に通りがかりに観た2つの展示(http://d.hatena.ne.jp/Uu-rakuen/20080921/p1)で説明してくれた親切なお二人で、先方も私たちのことを覚えていただいていて、これまた不思議な縁だなと思いました。どうもありがとうございました。
◆木本圭子/Imajinary・Numbers http://www.kimoto-k.com/
◆すいぎょく園 http://www.suigyoku.co.jp/
◆田中屋せんべい総本家 http://www.tanakaya-senbei.jp/

「サイトシーイングバスカメラ」 by 佐藤時啓+Ray Projects(三友周太)

 イベントハウスにとって返して2時出発のバスに乗りこみ「サイトシーイングバスカメラ」に参加しました。これはなかなか面白かったです。

 バス1台を巨大な移動暗箱(カメラオブスクラ)にしたてるというアイデアが秀逸です。バスの側面5か所に穴をあけレンズを仕込み、窓すべてを暗幕で覆います。通路の中央、バスを左右に仕切る位置に吊革の代わりに白いスクリーンが張られ、レンズが集めた光を映し出すしくみです。
 われわれ観客を乗せた真っ暗なバスが町を走りだすと、見事にスクリーンに町の景色が映し出されました。さらに面白いのは、バスの両側の風景がスクリーンの表と裏に同時に映し出されることです。反対側の景色はスクリーンの裏側に映るのですが、映像はこちら側の景色に重なる。その視覚効果初めて体験する不思議なものでした。
 
 「晴れているともっとくっきりと、たとえば空の青などはもっと鮮やかに見えます」と、バスガイド姿の女性スタッフが説明してくれました。こうした細部の細かな演出も楽しさを倍増させてくれました。

竹島会館

 その昔、明治天皇がお泊りになったという建物が竹島会館。ここにも作品が複数展示されていました。1階の広間にはソファが置かれ、飲み物とOOGAKI BIENNALEせんべい(実は田中屋の大垣名物みそせんべい)のセットが150円で提供されていました。名づけて「本陣カフェ」。

 「Orfi」と題されたパフォーマンス作品の上映を見ながらコーヒーとみそせんべいをいただきました。まあ、これは何とも不思議な作品で、まさに上映されている広間でのパフォーマンスなんですが、説明は難しい。簡易さるぼぼ、もしくはクリオネを想起させる布製の玉にイカの耳をくっつけたようなものが多数天井からつりさげられている。その耳を若い男と、浴衣を着た若い女が折ったり開いたりすると、仕組まれた無線モジュールによって幼子の声のような音が発せられるらしい。その声が何と言っているのか聞き取れないのだが、耳に届いて、思わず笑いがこぼれてしまいました。親に駄々をこねる子供のようなのです。「もっと遊んでよ」とか友達にいたずらされて「やめろー」といってるみたいな。

「よさいくさ2008」in大垣公園

 18時からビエンナーレの最後を飾る「クロージング・コンサート」が開かれ、ガムランの楽器を使った演奏があるということで、これを聴いてみたいと思い武徳殿の場所を確認に途中大垣城に向かいました。そしたら、隣の公園で大垣城をバックにステージが設置され「よさいくさ2008」なる、いわば北海道のよさこいソーラン祭りを模したイベントがけっこう盛大に行われていました。

 名古屋でもやってるようだし、今や全国各地でよさこいは大流行りです。私としては、なんでみんな「一世風靡」様の踊り、掛声、衣装となってしまうのか、少々解せないのですが、要は老若男女誰もが一緒に何かをやりたい、気持ち良く汗をかいて仲間と一緒にビールが飲みたい、そういうことなんだろうなあと理解しています。そういう人が増えているというのは今の世の中を見つめれば納得できないわけではありません。

そして「クロージング・コンサート」in武徳殿

 クロージング・コンサートでは9/19のビエンナーレ開幕の日に初演された「海を守るラトナ・スウィディ」(松本直祐樹)と「ラグドリアンに落ちる粒」(高橋裕)の2曲のガムラン演奏が行われました。この日の司会進行も三輪さんが務められました。作曲者の二人がIAMASの学生で、三輪さんが担当教授だからということもあるのでしょうね。
 ちなみにガムランとは、インドネシアの楽器の総称だそうでで、特定の楽器の名前というわけではないようです。
■「海を守るラトナ・スウィディ」(松本直祐樹)
 「海を守るラトナ・スウィディ」は4人の演奏者がマリンバ様の楽器(グンデルというようです)をたたきます。手元を見ながら演奏していましたので譜面的なものがあるのだと思います。楽器の前に置かれたマイクから音を拾ってパソコンに入力され、我々の耳に届くのは、パソコンに仕組まれたライヴ・エレクトロニクス技術によって編集された音ということになります。「イアマス コンテンポラリー・ミュージック コンサート」で演奏されたの「september session」と仕組みとしては同じです。ただスピーカーから出す音への変換するロジックが異なるということでしょう。プログラムには「音の高さを少しずつ変化させてスピーカーから出力する」とあります。また「ガムランの響きを海のイメージに重ね合わせた」と作曲意図が書かれています。月明かりの下で、静かに揺れる水面に光がたゆとうような情景を思い浮かべてしまうような音楽でした。
 伝統の衣装(上は白いシャツ、下は赤い布を巻いただけのスカート状のパンツ)を身につけたダンサーが曲の始めから終わりまで、一点をくるりくるりと回りながら、左手は腰のあたり、右手は頭の横に置いて耳を澄まして遠く波の音を聴くような格好で踊り続けていました。武徳殿はさながら海の底と化していたのでした。
■「ラグドリアンに落ちる粒」(高橋裕
 この作品で追及されたのは音の「うなり」だそうです。この曲は大小のフライパン(これはドラのようでもあり割と大きいので糸で1個ずつつりさげられています)や、大小の鍋につまみのついた蓋をかぶせたような形をした銅製の楽器(ボナンと呼ぶようです)を使って演奏されました。5人の演奏者は数種類の大きさのボナンの間を移動しながら、響きを重ね合わせてその「うなり」を創っていきます。
 作者はこの曲の作曲に先立ち、個々の楽器の周波数をスペクトル分析(!)し、その結果をもとに「うなり」が発生するように作曲したそうです。彼は大学で物理学を修めたのちIAMASに来たそうで、なるほど音とは物理の一分野に違いありません。三輪さんは「探求の結果としての音楽が仮にまったくつまらなかったとしても、研究としては完ぺきだからOKと言いました」と演奏前に解説されました。
 「うなり」というものをどう聴き分けられるかというところで、私などにはその面白さが十分わかったとは言い難いのですが、少なくともガムランらしい楽器の響き、演奏の面白さは楽しめました。
 このあと休憩をはさんで、市民参加者を対象にしたワークショップでの成果がお披露目されたはずですが、都合により失礼しました。
ガムランの楽器が写真入りで解説されています。楽器名などを参照させていただきました。http://www.asahi-net.or.jp/~HB9T-KTD/music/Japan/Instrument/Ethnic/gamelan.html