2010-03-07から1日間の記事一覧

「国のない男」 カート・ヴォネガット著 金原 瑞人訳

これはヴォネガットの「サミング・アップ」である。 今年(2007年)の4月に84歳で亡くなったヴォネガットが82歳のときに書いた最後の本である。本書の一節。 「『進化』なんてくそくらえ、というのがわたしの意見だ。人間というのは、何かの間違いなのだ。わ…

「ユートピア」 トマス・モア著 平井 正穂訳

政治家や経営者にこそ、今まさに読んでもらいたい。モアが命賭けで作り出した世界の理想に学ぶべきことは多い。 期待以上に面白く読んだ。ここで示されたモアの理想の世界像が、結局のところ21世紀の現代でも、いまだに求められる理想であり続けていることは…

「うるわしき日々」 小島 信夫著

小島信夫の自在さが体現する「小説の可能性」 最近ケータイ小説なるものがはやっている。2007年のベストセラーの上位を占めるという。中心的な読者は女子高生。等身大の主人公に起こる不幸や悩みに自分の姿を重ね合わせ、困難に立ち向う姿に共感し、時に涙す…

「垂直の記憶」 山野井 泰史著

山野井泰史は登山界のベートーヴェンであり、宮沢賢治である。 山野井夫妻のことはあるTVの番組で知った。2人とも命と引き換えに凍傷で多くの指を失っている。しかし、指を失ったことなど人生を生きる上でたいしたことではないとでもいうように二人の語る…