12月1日大垣市民会館で行われた大林宣彦監督シネマ&トークに行ってきました。

 1985年の映画「さびしんぼう」の上映と1時間にわたる大林監督の講演&ピアノ演奏を楽しみました。大林監督はテレビで見るより小柄な印象。

 「さびしんぼう」は世間で尾道三部作と呼ばれるうちの一本。テレビでちょこちょこと見ていたのですがしっかりと見るのは初めて。映像は確かに古めかしいけど、改めていい映画だと思いました。今見ても十分楽しめる力を持っています。夕日に映るオレンジの光の美しさが全編にわたって印象に残りました。特に、船上の群衆の中に埋もれているはずの冨田靖子演じるヒロインの顔だけを浮かび上がらせた陽の光の効果は、美しさにおいて際立っていました。この映画はファンタジーの力を感じさせたし、それも含めて「映画にしかできないこと」ないしは「映画だからできること」を鮮やかに見せてくれました。
 講演では9.11以降の「映画人の責任」ということを強く語られ、平和への貢献を足元の地域や家族から、あるいは「自分たちにできること」が何かを考え続け実行することの大切さを、真摯に、かつユーモアあふれる語り口で、黒澤明とのエピソードなどの貴重な話を交えながら話されていました。
私自身は、この日大林監督が語られたほど世界や人間に対して楽観的ではないと考えますが、大林監督も実はそれほど楽観的であるわけでもないとも思います。ただ、彼は敢えて未来への楽観的なビジョンだけを語ることで、強い意志を示そうとしたのだと思います。「最初からダメと言わないこと」つまり「信じること」の力を伝えようとしたに違いありません。
 最後に(私は知らなかったのですが)映画音楽も自ら手がける監督が、「別れの曲」ではなく、これも監督の映画から、トレモロをたっぷり効かせた「なごり雪」をピアノで弾かれ、会場は大いに盛り上がりました。映画と同じようにすばらしいエンターテイメントを楽しみました。
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